スティーヴン・キングに絶賛された『隣の家の少女』のジャック・ケッチャム原作「襲撃者の夜」を映画化。脚本はジャック・ケッチャム本人が担当。
【STORY】
アメリカ・メイン州デッドリバーでは、以前から住民が行方不明になったり惨殺されたりする事件が多発していた。この日も、2名の女性が殺害され、赤ん坊が行方不明になるという事件が発生。事件を捜査する警察は、11年前に起きた忌まわしい事件が再び起きたと予想する。その町に住むゲームデザイナーのデイヴィッドは、ある夜庭先で奇妙な格好をした少女を見かける。そしてその日の夜「彼女ら」はデイヴィッドの家を襲撃する…。
【REVIEW】
不条理の限りを尽くした『隣の家の少女』のジャック・ケッチャム原作「襲撃者の夜」の映画化である。映画タイトルに『~ 食人族 the Final』がなぜかプラスされてしまったことにはあえて触れないでおこう。
この作品はケッチャムのデビュー作「オフシーズン」の続編にあたる(原題は「オフスプリング」)。なぜ続編の方が先に映画化されてしまったのかは「大人の事情」ということらしい。そこも触れないでおこう。
この「オフシーズン」「襲撃者の夜」の2冊で描かれた人を襲い食料にする一族は、16世紀のスコットランドで一族を率いて多数の人間を殺して食べたとして処刑されたソニー・ビーンがモデルになったといわれているようだ。
したがって実話を元にした紹介される事が多いが、日本では戦国時代に相当する16世紀の伝説なので、本当の話かどうかは疑わしい。
続編であるが故に、小説を読んでいない人にとっては、話が唐突、とか11年前の事件とは何か?などの声が上がり、説明不足の作品となった感は否めない。
自分は2冊とも原作を読んでいるので、そんなに違和感は感じなかったが。
唯一違和感を感じたのが、襲撃者達の風貌。骨で作ったアクセサリーなど、いかにもな風貌にさせられている。彼女らは野生の獣と同じで、生きるため、食べるため、戦うため、子孫を残すためだけに存在している。だからあのような残忍な行為が行える。だから怖いのである。
ある程度原作に忠実に作られている。それもそのはず、脚本はケッチャム本人。しかも検死官役で出演もしている。
だがしかし、100分ほどの映像にまとめられているため、やや深みが無いのが残念。
例えば、元警官のジョージ・ピーターズ。彼は11年前の事件で襲撃者達との激闘の末、負傷しながらも生き残った男である。そして警察を辞め、妻に先立たれて飲んだくれの生活をしているところへ今回の事件。地元警察に「専門家」として叩き起こされ現場に向かう。事件のトラウマと妻の死のショックが残るまま事件へ関わることになった彼の心理描写が少ない。
それから襲撃者達。原作では一人ひとりにキャラがある。リーダー格の女は「ウーマン」11年前の事件で命からがら逃げ出し、再び子どもを誘拐するなどして一族を形成した。そのほか「ファーストストールン」「セカンドストールン」「カウ」「アースイーター」「ラビット」など、バラエティに富んだキャラが揃っているのである。映画ではウーマンとその仲間達みたいな描かれ方で少し物足りない。まあ、時間がないからしょうがないけど。
ちなみに映画では、襲撃者達は1950年代に行方不明になった灯台守の末裔というギミックが付けられている。灯台守がなぜ食人族に?
11年前の事件とは、前作「オフシーズン」で描かれた事件である。
アメリカの片田舎でオフシーズンになると人もまばらな僻地に引っ越した女性編集者とそこへ遊びに来た恋人や友人の計6名が襲撃者に襲われる。そこへ当時警察署長として勤務していたジョージ・ピーターズ率いる警察官たちも巻き込んでの地獄絵巻きが展開されるお話である。ほとんどが死に、しかも救いのないラストで後味の悪さが光るなかなかの作品である。
今回も同様に、生き残ったウーマン一族とゲームデザイナーのデイヴィッドとその家族・友人、そして警官と元警官のジョージ・ピーターズの戦いの図式。また、この作品では最後に襲撃者側に寝返るという暴挙を働いた、最低の中でもさらに最低のキャラ、デイヴィッドの妻の友人の夫スティーヴンの存在にも注目してほしい。それにしても、巨匠スティーヴン・キングに絶賛されておきながらこのキャラにスティーヴンという名前を付けるとは…。
最初はデイヴィッドの家を襲う襲撃者達。デイヴィッドは素早く殺され、腸を抜き取られ食材としてお持ち帰り。デイヴィッドの妻エイミーは、そのままお持ち帰り。2人の子どもで赤ちゃんのメリッサ、エイミーの友人クレアとその子どもルークは窓から逃げ出すが、ちょっとした攻防の末エイミーは捕まりお持ち帰り。少年ルークと赤ちゃんメリッサは、昼間に見つけた木の上にある秘密基地に隠れる。
エイミーとクレアは襲撃者のアジトである海辺の洞窟で捕らえられ、さんざんと嫌な目に遭っている。そこへデイヴィッドの家に向かっている途中の別の場所で捕らえられた暴力夫スティーヴンも運び込まれる。
襲撃者達は赤ちゃんをやたらと敬っている。確かに一族にとって子孫の繁栄を象徴する赤ちゃんの存在は貴重なのである。その赤ちゃんの居場所を聞き出したい襲撃者達。スティーヴンはあろうことか、自分の命ほしさに妻クレアから赤ちゃんの居場所を吐かすためのアドバイスを襲撃者達に送るのである。下衆の極み!
すったもんだしているうちに今回もジョージ・ピーターズが洞窟にやってきて銃撃戦。双方に犠牲者を出し銃撃戦終了。
一方、木の上の秘密基地。赤ちゃんメリッサを巡り、少年ルークと襲撃者側の少年とのバトル。ルークが襲撃者側の少年が持っていた斧を奪い取り、一撃を加えて勝利。襲撃者側の少年は木下へ落下。なかなか子どもが子どもを殺すシーンは珍しい。しかもラストで。さすがケッチャム。
小説を読んでいるだけに物足りなさは感じるが、この手の作品が好きな人にはそれなりに楽しめる出来になっていると思うので、見て損はない作品である。だが、オススメは先に原作2作を読むことである。
ちなみに、なかなか書店には置いていない。
●関連作品・記事
『隣の家の少女』
【MARKING】
オススメ度:★★★★★★6
えげつない度:★★★★★★★★8
動物捕まえる方が楽そう度:★★★★★★6
禍々しい度:★★★★★5
【INFORMATION】
・原題:OFFSPRING
・製作年:2009年
・製作国:アメリカ
・監督:アンドリュー・ヴァン・デン・ハウテン
・製作:アンドリュー・ヴァン・デン・ハウテン、ウィリアム・M・ミラー、ロバート・トニーノ
・原作:ジャック・ケッチャム『OFF SPRING』
・脚本:ジャック・ケッチャム
・出演:アート・ヒンドル、ポリアンナ・マッキントッシュ、アナ・テスラー、ホルター・グレアム、エイミー・ハーグリーヴス、エリック・カステル、アンドリュー・エルヴィス・ミラー、スペンサー・リスト、トミー・ネルソン、ジェシカ・バトラー、レイチェル・ホワイト、ジャック・ケッチャム
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襲撃者の夜 食人族 the Final
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